トラピストビールというビールがあります。これはご存知の通り、トラピスト派修道院が直接あるいは間接的に醸造にかかわっているビールに与えられる称号です。世界でトラピストビールと呼ぶことができるブランドは6種類しかありませんでした。そのうち1つがオランダに(La Trappe)、残りの5つ(Chimay, Orval, Westmalle, Rochefort, Westvleteren)がベルギーにありました。このうち、La Trappeは修道院がもはや醸造にタッチしなくなったため、トラピストビールの称号を剥奪されるかもしれないという話も聞きます。
そんな中で1998年末に7番目のトラピストビール醸造所がベルギー国内のリンブルフ州北方のオランダ国境近くの町Achelに誕生しました。この地にあった聖ベネディクトス修道院 (Sint Benedictusabdij)が敷地内にあった古い建物を改造し小さなブルワリーカフェを設立し醸造をはじめたのです。そういうわけで、まだ歴史が浅いトラピスト醸造所ですが、いずれにしても、新たにトラピストビールと呼べるものを味わえるのは喜ばしい限りです。
さて、この修道院ですが本当にオランダとベルギーの国境上にあり、敷地内を国境線が横切っています。修道院内の建物にはオランダ側にあるものもあれば、ベルギー側にあるものもありますが、醸造所はベルギー側にあるため、ビールは辛うじて「ベルギービール」ということになります。
先ほど、ブルワリーカフェと書きましたが、醸造所はちょうど日本で最近いろいろな地方で良く見かけるブルワリーカフェのようになっています。カフェの中に醸造設備があり、ガラス張りでカフェに腰掛けながらでも見ることができます。醸造設備は最新のものでピカピカに光っています。これからこの設備に歴史が刻まれていくことでしょう。カフェで飲めるビールはすべて樽生で、瓶のビールは今のところ(1999年3月現在)ありません。それならばと、空き瓶を持っていってこれに入れてくれと頼んでも断られます。ですから、ここのビールを飲みたければ本当に醸造所まで行く必要があります。作っているビールは軽快な味のブロンドエールの“4”、苦味が効いた“6”の2種類です。
修道院の敷地内には醸造所のほか、本屋やスーパーなどがあります。スーパーのビールの品揃えは豊富で、数えたわけではありませんが、100種類以上はあるのではないかと思います。専用グラスも揃っています。修道院内のスーパーなのに何故と思ってしまいましたが、よく考えるとそれだけ地域の人々の生活と密接に結びついた修道院だということなのでしょう。
1999年3月訪問
皆さんからの情報
De Achelse Kluis
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