ブリュッセルの中心部からそんなに離れていない市街地の中にこの有名な Cantillon 醸造所があります。「こんな街中にあるのか!」と思うようなごく普通の路地裏です。現在、グーズやクリークは大量生産の甘口のものが主流ですが、この醸造所は頑固に昔ながらの伝統的な手法でランビックを作り続けています。醸造のための設備も19世紀からのものをそのまま使っています。現代的なランビックはわずか1ヶ月貯蔵しただけで出荷してしまうのに対し、この醸造所は伝統的手法に従い、最低でも1年熟成させてランビックを作ります。ボトルに詰められてからもさらに6ヶ月から数年も再発酵が続きます。こうなると同じランビックやグーズという名前でも全く別のビールと言ってよいでしょう。
醸造所の設立は1900年。当時ブリュッセルには数多くのランビック醸造所がありましたが、現在では伝統的な手法でランビック醸造を行っている醸造所は片手で数えられるほどしかありません。
醸造所に着くと、入口で見学料金(100BEF)を払い、自分の希望する言語の冊子をもらって醸造所の探検の始まりです。冊子はありがたいことに日本語版もあります(小西酒造が翻訳したものです)。
まずは1Fのマッシングタンク。小麦とモルトを粉砕し湯とともにこの中に入れ、タンクのプロペラを回転させて混ぜ合わせます。温度が上がり、糖化(澱粉が糖分に変わること)が起こります。さらに湯を加え、糖分を抽出します。これが麦汁(wort)です。
麦汁は2Fのボイラー室に上げられここで煮沸・殺菌します。次いでタンクの中にホップが入れられます。ランビック醸造には古いホップが用いられます。
次はランビック醸造で最も大切な部分、すなわち麦汁の冷却と野生酵母を加える部屋です。部屋と言っても大きな浅いタンクが真ん中にあるだけですが、ここで麦汁を大気にさらすことで、ランビックに欠かせない野生酵母が麦汁に加えられるわけです。この野生酵母はブリュッセルのこの地域にしか住んでいないと言われているそうです。何年か前に屋根を葺き替えようとしたそうですが、この部屋の微生物の生態系の微妙なバランスを崩すかもしれないということでやめたそうです。
野生酵母が混じった麦汁は樽の中に詰められ、発酵が始まります。数週間すると栓が締められ、ビールは長い熟成の期間に入ります。ランビックの誕生です。
最後にボトル詰めの機械と貯蔵庫を見学します。若いランビックと熟成がより進んだランビックをブレンドしてボトルの中に詰めた後、貯蔵庫でさらに保管します。ここで若いランビックに含まれる糖分により再発酵が起こりグーズが出来上がります。クリークなどのフルーツビールも同様に瓶内で再発酵が起こります。
見学の後は試飲です。醸造所の片隅に設けられたカフェで、理想的な状態のグーズやクリークを飲むことができます。
ビール好きがブリュッセルを訪れるならぜひ一度は行ってみる価値がある所です。
皆さんからの情報
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